後輪駆動式車いす


     



一般的に言われている車いすは、この種のものを指していることが多い。乗車している者が自らの力で操作し、移動する為に用いられる車いす。自走式車いすと表現されることもある。介助用として使われることも多い。
 
【シート角度(座の角度)】
1.シート角度を付ければ付けるほど股関節が窮屈になり、背もたれ方向に体が押される。車輪を駆動するときは、特に大きな力が背もたれ方向にかかり、車いすが後方へ不安定となる。
2.角度を付けすぎると、立ち上がりのために臀部をシートの前方へ出そうとしても、臀部が滑って出し難くなる。
3.ある程度の角度を持つことで、座位姿勢を崩す原因となる前方への滑りを少なくすることができ、使用者の座位姿勢も安定しやすい。高齢者が使用する場合でも、前後差(シート前座高、後座高の差)で2〜3cm程度は付けてあるものを選択することを勧める。

【バックレスト高(背もたれの高さ)】
1.バックレスト高は、使用者の座位バランス能力によって異なる。一般的には肩甲骨の下部までの高さが良いと言われているが、座位バランスが不安定な場合には高くし、安定している場合には低くする。
2.駆動に際し上肢を大きく動かすことができる場合には、肩甲骨を覆わない高さにする。肩甲骨を覆うと上肢を後方に動かしたとき、肩甲骨が背もたれを押して、身体が前方へ倒れる方向に力が加わり動き難くなる。
3.クッションを使用する場合は、クッション厚さの収縮率を考慮してバックレスト高を決めることが大切である。

【シート前座高(座面高)】
1.立ち上がりの動作や移乗動作に大きく影響する。
2.立ち上がりにおいては、足底から膝下までの長さより高めのほうが動作は容易となる。
3.移乗動作では、移乗する場所の高さと同程度の高さになることが望ましい。

【フットレストとシートの距離】
1.座位の安定を図るためには、フットレストとシートの間の距離を、足底から膝下までの下腿の長さと同じように調節する。それによってシートに臀部から大腿全面が接し、座位の安定を図ることができる。
2.この距離が短か過ぎると膝が高くなり、臀部にかかる体重が大きくなるばかりでなく、膝の安定性が悪くなり、臀部が前方へずれやすくなる。

【シート幅(座幅)】
1.臀部幅よりシート幅が大きくなりすぎると、座位の安定が図れないばかりか、ハンドリムと距離が遠くなり、上肢での駆動力も低下することになる。また、車いす全幅も大きくなり、使用環境との関係にも影響を及ぼす。

【車軸の位置】
1.車軸の位置がバックパイプの位置より前方に位置すると、駆動輪への加重が小さくなるため、より軽く操作することができ、また、操作点(ハンドリムの位置)が前方にくるため、上肢での操作はより容易となり、大きな駆動力が発揮できる。
2.しかし、車いすの後方への安定性が損なわれれるため、注意が必要となる。
 
【両手による駆動】
1.ハンドリム後方より回転に合わせて握り、前方に強く押し出す。このとき可能であれば体を前方に傾け、体重をハンドリムにかけるように駆動すると駆動力が増す。
2.駆動を終えて前方で離した手は、後方へ回して、ハンドリムの次の漕ぎ出し位置まで円運動になるように心がける。車いす操作に慣れていない場合やゆっくり進行する場合は、手が往復運動していることが多い。
3.方向を変えるには、曲がりたい方向と反対側の車輪を強く押す方法や曲がりたい方向のハンドリムにブレーキをかける方法などがある。

【両足による駆動】
1.後輪駆動式車いすは、両足による駆動も行うことができる。
2.シート前座高(座面高)はかかとがつくように低いものが適している。
3.可能な限りバックレストに背中をもたれないようにし、体を前傾させて操作する。バックレストにもたれかかると、徐々に座面でずり落ち、ずっこけた座りとなっていくため注意を要する。
4.下肢はかかとから先に床面に接し、つま先で後方に蹴るようにする。

【片手片足駆動】
1.後輪駆動式車いすは、片手片足による駆動も行うことができる。
2.シート前座高(座面高)はかかとがつくように低いものが適している。
3.片手で車いすの推進を行い、下肢で方向をコントロールする。その際、姿勢が崩れていかないよう注意する。
4.駆動する側のフットレストは脱着できる構造であることが望ましい。