入浴用チェア(シャワーキャリー)


     



 洗い場で用いるいすで、キャスターや車輪が付いていて可動するもの。主に居室や脱衣場から洗い場への移動のためと、そのままシャワー浴を行うために使用される。後方が大きく開いていてトイレ便器に合わせられるものは、トイレチェアとしても兼用できる。また、汚物用ポットを付けてポータブルトイレ(コモード)として使用できるものもある。
 
1.シャワーキャリーの使用目的や求める条件を明確にする。

2.座位の安定が必要な場合
1)座る人の姿勢保持能力を確認する。
2)背もたれやアームレストの高さが高く、大きめのものが良い。
3)フットレストは足部全体が安定して乗せられる大きさのものにする。
4)前方への転落を防止するため、前面での支持バーなどのあるものにする。
5)座る人が小柄な場合はアームレスト間の内幅が大きすぎないものにする。
6)座る人の臀部の大きさに比して、座面のU字型カットが大きすぎないものにする。

3.室内移動のしやすさが必要な場合
1)室内のスペースが狭い、または通行幅が狭い場合には全幅や全長がなるべく狭いものが良い。
2)通行場所に段差がある場合は、車輪が大きいものやティッピングが可能なもの、比較的軽量なものを選択する。
3)介助者の体格に合った位置のグリップのほうが押しやすい。

4.洗体のしやすさが必要な場合
1)身体への接着面が少ないものにする。
2)座面にU字型カットがあるものを選択する。
3)座面や背もたれの形状や素材は、洗体や洗髪の泡がすぐに洗い流せるものが良い。
4)座っている人の座位が安定しており、なおかつ前かがみ姿勢をとれる場合には、背中を洗う際に背もたれが折れる(または外れる)ものがよい。
5)洗体のしやすいものでは、洗体や洗髪を座っている本人による自立動作へと導くことができる。

5.移乗介助を軽減する場合
1)座面の高さは移乗対象のものと同じくらいのものを選択するか、調節する。
2)側方または前後方向に揺らしても安定しているような全体のバランスが良いものにする。
3)立位をとって移乗する場合は、全体が安定してアームレストが握りやすく、フットレストが可動して足部スペースが大きく空くもの(かかとが後方に引けるもの)にする。
4)立位が困難な場合は、アームレストは可動して側面が空くものにする。
5)ブレーキロックによる制動性の高いものにする。

6.リフトを使用する場合
1)吊具が引っかからないよう、本体には突起部の少ないものがよい。
2)背もたれはなるべく身体への接着面が狭いほうが吊り具を装着させやすい。
 
【一般的な使用方法】
1.ベッドまたは車いすなどから移乗する。その際、ブレーキロックを必ず行う。アームレスト・フットレストが可動するものはあらかじめ移乗しやすいようにしておく。
2.脱衣については、下衣は移乗の前にしておくほうが介護しやすい。上衣は座位が安定している人であれば、移乗の前後どちらでもよい。
3.アームレストは元の位置に戻し安全性を確認する。フットレストには足部を乗せる。
4.ブレーキロックを解除し、シャワーキャリー本体を洗い場まで移動させる。段差の大きな所は後ろ向きで走行する。
5.洗い場では、そのまま洗体や洗髪、シャワーなどを行う。その際ブレーキロックは必ずかけるようにする。
6.浴槽へ移乗する際は、フットレストから足部を下ろし、アームレストが可動するものは移乗しやすいようにして行う。
7.入浴後は、本体の水分をタオル等で拭き取る。そのまま脱衣場などへ移動すると、かなりの水滴が落ち、床面が濡れてしまうので注意する。

【リフトを使用する場合】
1.洗い場(リフトによっては脱衣場)への移動までは上記と同様。
2.吊具を身体に装着する。装着方法は、車いすからリフトで移乗する場合と同様である。シャワーキャリー本体の突起部などにシートが引っかからないように注意する。また居室などであらかじめ座面に敷いておく方法もある。
3.シャワーキャリーの座面がリフトの吊具を兼用しているものは、上記までが省略される。
4.吊具をリフト本体に接合する。
5.吊具ごと座っている人を持ち上げ、浴槽へ入れる。
6.浴槽から出る場合はシャワーキャリーを確実に固定し、正しく着座するように注意する(以下「吊り上げ式床走行リフト」を参照)。

【トイレキャリーとして使用する場合】
1.下衣脱衣後、キャリーに移乗する。
2.トイレまで移動し、後ろ向きに便器にアクセスする。