吊り上げ式床走行リフト


     



 電動または手動で人を吊り上げ、キャスターで移動して降ろすことによって、移乗介助を行う機械である。取付工事などが不要で、簡易に使用できる。

昇降機構にはおおむね3つのタイプがある。
【電動リンク駆動システム】
1.直動型駆動機とリンク機構を用いたシステム
2.昇降操作に力が不要であり、簡易な構造である。
3.昇降の移動軌跡が円弧を描くので、操作時にはその特徴を把握しておくほうがよい。

【手動油圧ポンプ方式】
1.油圧ポンプを手動で動かす方式。
2.上昇するときには何回かのポンピング動作が必要である。
3.下降時にはバルブを開くが、バルブの開き方と体重によって、下降速度が変化する。

【直動方式】
1.巻き上げ機構を持ち、ハンガーをベルトなどで巻き上げることによって昇降させるか、ハンガーをマストにそって直動させる方式。
2.昇降時の移動軌跡が直線となるので、理解しやすい動きである。
3.構造が大きくなりがちである。
 
【用途】
1.基本的にはベッドと車椅子・いす間などの移乗介助に使用する。
2.床からすくい上げることも可能な機種がある。
3.浴室で使用することは多くの場合できない。
4.トイレで使用するには、床を平らにするとともに、介助者が立つスペースが確保できることと、脱衣や座位保持の方法を考えておく必要がある。
5.簡単に組み立てられる機種もあるが、一般的には組み立てた状態のままである。

【他の機器との適合】
1.ベッドで使用するときは、ベッド下にベースが入ることが必要である。ベッド下の高さとベース高さとを確認する。
2.安楽いすなどで使用するときは、ベースの開き幅といすなどの幅を確認する。
3.車いすの長さが長いときは、フットレストがベースやマストにぶつからないことを確認する。
 
【昇降動作】
1.ベッドでの使い方
[上昇]
@ベッドに背上げ機構が付いている場合は背を上げる。
A吊具を身体にかける。
Bリフトを近づけ、吊具をフックにかける。
C少しずつ上昇させるが、昇降動作などをしているときは、キャスターのロックは決してかけてはいけない。
Dベッドに背上げ機構が付いていないときは、介助者が腕で背中を起こすようにしながら上昇させる。
Eベッド下にリフトのベースが入らない場合は、ハイト・スペーサーを使うか、ベッドの足にキャスターを付ける。この際には、その他の日常生活でベッド高さが高くなり過ぎていないことを確認する。
[下降]
Fベッドに降ろすときはベッドの背を上げておいたほうがよい。
Gお尻の位置を背上げ機構のジョイント部と一致する位置に降ろす。
Hお尻が最初に着地するように、足を軽く持ち上げるか、膝を曲げた状態で着地するようにする。
I降ろした後、膝を伸ばす。
2.車いすでの使い方
[上昇]
@吊具を身体にかける。
Aリフトのベースを広げ、近づける。
B以下はベッド上での使い方と変わりがない。
[下降]
C車いすへ着座するときは、腰が深くなるように降ろす。このテクニックには以下のような方法がある。
  ・取っ手を上に引きながら着座させる(図1)。
  ・車いすをキャスター上げしながら着座させる(図2)。
  ・膝を押しながら着座させる。

【移動】
 @このリフトは移乗を目的としており、吊り上げたまま安全に移動するには環境条件の整備が必要である。原則として同一室内で使用する。
 Aキャスターで移動するから、段差がある環境は危険である。速度がついて段差を越えようとすると転倒しやすくなる。
 B移動するときは押すよりも引くほうが容易に動かせる。
 C回転するときは、操作ハンドル側を回転させる。前を回転させようとすると、大きな力が必要になる。
 D幅寄せするときは自動車の運転と同じように、切り返し動作で幅を寄せる。
 Eこれらの使い方をすれば、畳の上でも使えることが多い。
 F畳の部屋で動かしにくいときは、フローリングに変えることがよいが、段ボールをつぶして敷いたものでも、少し軽く動くようになる。