吊り上げ式リフト用吊り具


     



 リフトによって人を持ち上げる際に使用する、人との接点となるものである。身体機能により、使用場面により、また介助者の状況により、最適な形、大きさのものを使い分けることを原則とする。
【脚分離型】
 座位姿勢で着脱でき、吊り上げられたときの感覚も比較的よい。
1.ローバック型:頭の支持を必要としない場合に使用する。
2.ハイバック型:頭の支持を必要とする場合に使用する。

【シート型】
 1枚のシートでできており、身体全体をくるみ込む。座位姿勢では着脱はできず、臥位あるいは膝立ち位で行う。
1.ローバック型とハイバック型がある。
2.入浴に適しており、メッシュが多い。

【セパレート型】
 2本のベルトまたは2枚のシートで吊り上げる。
1.吊具着脱の介助がもっとも容易な吊具である。
2.身体機能によっては落下したり、痛みを感じたりする危険がある。
3.股関節、肩関節・肩甲帯の固定力を必要とし、適応は慎重に行う必要がある。

【トイレ用】
 脚分離型の臀部のおおいを小さくしたタイプで、ベルト型との中間的な吊具である。
1.吊り上げたとき臀部が大きく空くので、下着などを着脱させることができる。
2.身体機能によって臀部が落下した姿勢になりやすい。これを防止するために、胸ベルトがついているタイプ、吊り上げるにしたがい体重で胸を押さえるタイプなどがある。
 
 用途によって、身体機能によって、介助者の状況によって、吊具を選択する(図1、2参照)。



【脚分離型】
吊具の着脱は座位姿勢で行うことが適している。
 臥位でも装着できるが、吊り上げるときはベッドの背を上げてから吊り上げたほうが、しわなどを生じにくく、介助も容易になる。
1.吊具を背中にかける。
2.体幹を前傾させる。
3.吊具を深く(臀部の割れ目まで)差し込む。
4.片手で腰の内側を押さえるようにしながら、片手で吊具の下側ストラップを手前に引く。反対側も同様にセットする。
5.吊具の両側の長さが同じことを確認する。異なるときは修正するか、やり直す。
6.大腿部の下を通し、股間から引き出す。
7.体幹の前で交差させる。
8.ハンガーにすべてのストラップをかける。
9.少し吊り上げる。大腿部の下にしわがないことを確認する(しわがあれば伸ばす)。
10.腕が圧迫されるときは肘あるいは肩を軽く前に引く。
11.臀部が十分に覆われていることを確認する。臀部が落ちているときは吊具のかけ方が悪いか、吊具のサイズが大きすぎることがある。
12.臀部は吊り上げ姿勢が立っていると落ちやすく、寝ていると落ちにくい。

【シート型】
座位姿勢では吊具の着脱はできない。臥位姿勢で行う。入浴で使用することにもっとも適している。
1.側臥位をとらせる。
2.吊具を中心が背中の中央になるように置き、仰臥位に戻す。
3.吊具を引き出し、身体の中央になるようにセットする。
4.ベッドの背上げ機能などを利用して背を起こす。
5.ストラップをハンガーにかける。
6.吊り上げる。

【セパレート型】
1.体幹ベルトを背中にかける。背中の真ん中程度までかける。脇の下にベルトが掛かると痛みや苦しさを感じやすくなる。
2.脚ベルトを大腿下に敷き込む。大腿部中央になるようにする。
3.股関節の固定力がまったくないと、体幹ベルトが脇の下になり、脚ベルトが膝下に食い込みやすくなり、苦しかったり、痛みを感じたりする。この状態で肩関節の固定力がないと落下する危険がある。

【トイレ用】
装着手順は基本的に脚分離型と同じだが、より容易である。
パンツやズボンを脱がせるには、吊り上げた状態で、衣類を丸めるようにしながら脱がせる。
はかせる場合には、座っている状態のときに丸めた衣類をできるだけ腰に近づけておき、吊り上げてから丸めた衣類を伸ばすようにしながらはかせる。