住宅改修・福祉用具導入のプロセスは、ニーズの発見→アセスメント→プランニング→実施→モニタリングという一連の流れになります。
これを具体的なプロセスとして見ると、下図のようになります。
住宅改修の具体的なプロセス

ニーズの発見
家屋状況の確認
身体機能の確認
プラン検討前に場所と動作の絞り込み
改修以外の他の方法
プラン検討前に場所と動作の絞り込み
- (1)福祉用具との適合
- (2)経済的な側面
- (3)家族の介護能力と生活
- (4)疾患による特性
- (5)身体機能の経時的変化
- (6)建物の条件
- (7)縁起物への配慮
- (8)キーパーソンの確認
プランの検討・作成 (見取り図に書き込む)
チームによるプランの検討 (他職種との意見交換)
プランの修正・検討
工務店への依頼・施工
完成後のフォローアップ
(財)テクノエイド協会「テクニカルエイド 第29号&第30号」より
ニーズの発見・把握・動機づけ
対象者がどういうことに困っているのか、本人・家族などに十分話を聞き、希望を引き出すようにします。ニーズはあっても、改修に消極的な場合は、その必要性を認識してもらうための働きかけが必要になる場合もあります。
家屋状況の確認
住宅改修のためだけでなく、ケアプランを立てるにあたっては、生活の全体像を把握し、チームのスタッフと知識を共有するために、家屋状況を確認する必要があります。家屋の全体像と生活状況を掴むために、見取り図を書いて、雰囲気や動線、段差、出入り口と壁・柱などが理解できるようにします。図面を書くことは、自分の考えを整理するためと、他の人(他の職種、対象者、家族)と話を共有するための手段ですので、上手い下手ではなく、分かりやすいことが一番です。
身体機能の確認
起き上がったり、座ったり、立って歩いたりする基本的な動作の確認をします。その動作が「トイレに行く」「浴槽に入る」という目的を持った動作に、どのように反映されているかを観察します。毎日の生活の動線上を動いてもらうと、より問題が明確になるでしょう。
プランを検討する前に改修すべき場所と動作を絞り込む
家屋状況と身体機能などを総合的に考えて、なぜそれが出来ないかを確認し、他の動作に変更できないか、簡単な福祉用具などの使用で解決できないのかを確認します。つまり問題となる点を絞り込み、場所と動作を明確にします。それでも解決できない場合は、具体的な改修の検討に入ります。
改修を考えていく時の8つの留意点
1. 福祉用具との適合をはかる
福祉用具でできることを明確にし、その福祉用具と住環境との適合を考えます。大掛かりなものでなく、安価で効果的な改修が期待できるかもしれません。福祉用具をいかに使うかで、改修のプランも変わってきます。
2. 経済的な側面を考える
住宅改修には費用負担が伴います。介護保険の枠内(20万円)で納まる場合もありますが、介護保険対象外の改修が必要な場合は、誰が、どの程度負担できるのかの大枠を掴んでおく必要があります。その際、(1)介護保険以外の公的な助成制度の有無および内容(地域によって異なる)を熟知していること (2)介護保険では償還払いを基本にしており、最初にまとまった金額がいることの2点を留意すべきでしょう。
3. 家族の介護能力と家族全体の生活を考える
介護者がどういう場面で、どの程度介護しているかを観察する中で、介護者の能力の確認をしましょう。また、生活様式の変更には色々な気持ちの問題が生じてきますので、改修にあたっては同居している家族の同意も必要です。後に問題を残さないためにも家族全員で話し合ってもらいましょう。
4. 疾患による病態の特性を知る
何らかの疾患によって動作などが困難な場合、その特性を知ることも大切です。ALSやリウマチなどの疾患にはそれぞれの特性がありますし、脳血管障害による片麻痺の場合は、左右の麻痺別の動作を確認し、手すりの位置や用具の配置を考える必要があります。それを知ることが改修のポイントになりますので、医療関係者などからも積極的に情報を収集しましょう。
5. 身体機能の経時的変化を考える
高齢者の場合、身体機能などの変化に伴う生活の変化が比較的短期間で生じることがあり、現状で最適な環境も時間と共に不適切になることがあります。特に、進行性の病気の場合、急激に身体の機能が低下して、改修が追いつかないこともありますので、当面どの期間使えそうなのか、いずれ再改修が必要となるかもしれないことなどを考慮しておく必要があります。
6. 改修する建物の条件を把握する
改修対象の建築物が自己所有/賃貸(民間・公営)、一戸建て/集合住宅の確認をしておきましょう。賃貸の場合は、改修の内容や場所に制限がある場合がありますし、公営住宅の場合は関係機関との調整が必要です。また、集合住宅で共用部分の改修をする場合は、住民で作っている管理組合等の了解が必要となります。
7. 縁起ものへの配慮
鬼門や家相などの配慮が必要かどうか前もって、確認しておいた方がいいでしょう。また、由緒あるもの、思い出があるもの、移動させたくないもの、釘を打ちたくないものなどもあるかもしれません。
8. キーパーソンの確認
改修のプランを最終的に決定するのは、本人、家族ですが、同居していない家族が現れて、異なった注文をする場合など様々なケースが考えられます。改修は費用が絡んできますし、何度もやり直しのきくものではありませんので、最終的に決定するのは誰かを確認しておきましょう。
プランの検討・作成(見取り図にプランを書き込む)
見取り図を参考に、自分なりの改修プランをより具体的に立案します。見取り図は、チームアプローチの必要な住宅改修にとって、共通の表現方法であり、連携を強くするために役立ちます。
チームによるプランの検討(他職種との意見交換)
見取り図をもとに、他の職種(建築関係者、PT・OT、保健婦、ヘルパーなど)の意見を積極的に聞きます。お互いがチームとして意見交換することで初めて、専門家の良さが発揮されます。これら他職種の専門性、継続性をコーディネートし、住宅改修に活用していくのがケアマネジャーの役割です。日頃から顔見知りになって関係をつなぎ、ネットワークを作る努力をしておくことが実際の場面で役に立ってきます。
プランの修正・検討
これまで検討してきたプランを本人や家族に提示して了解を取ります。
家屋状況の確認
代行して工務店に頼む場合、次の5項目に留意しましょう。
1. プランに盛りこまれた身体機能を説明して、改修の目的、条件などについて理解を得ましょう。
2. 具体的な個所を確認します。手すりの位置や種類、段差の解消など細かい点まで話し合いましょう。
3. 工期についてできる限り明確にしてもらいましょう。
4. 介護保険や公的な助成制度を使う場合は、調査や確認が入る場合もあるので、工務店側に知らせておきます。
5. 工事着工後も改修の意図通りに進んでいるかチェックしたり、対象者の身体状況の変化に気を配りましょう。
完成後のフォローアップ
完成後は、改修プランの目的に沿った工事が行われたか、本人や介護者等にとって便利になったか、効果があったか、取り扱いやすいか、安全に使用しているか等の観点からチェックしていきましょう。これには、現場を訪問して自分の目で確認するとともに、本人、家族の話、ヘルパーや訪問看護婦からの情報も参考になります。