住宅改修情報

  • 最初の改修
  • 2年後の改修
  • 5年後の改修

進行性疾患で、一人暮らし。障害の変化に応じて住宅改修した例

基本情報
年 齢 51歳 同居家族構成 基本的には一人暮らし。
2階に長男夫婦居住
性 別 男性 主介護者 ヘルパー
疾患名 脊髄小脳変性症 家屋の所有形態 持ち家
障害部位 四肢・体幹失調、構音障害、嚥下障害あり 家屋の建築形態 一戸建て
要介護度 要介護5
身体障害者手帳1種2級
周辺環境 都市部の閑静な住宅地
日常生活の状況(改修前の状況)
起 居 自立 排 泄 自立
移 動 歩行不安定ながら自立 入 浴 自立
移 乗 自立 介護サービスの
利用状況
改修前:ヘルパー、訪問看護指導
改修後:ヘルパー、訪問看護指導、
デイサービス
実際の改修箇所
カメラ 図面のこのマークにマウスをのせると実際の写真が表示されます。
改修前の状況
改修前
改修後の状況
改修後
住宅改修の概略
問題点
  • 屋内移動時(歩行)、バランスが悪く、転倒が多い。
  • 立ち座りが困難になってきている。
  • 浴槽内移動および浴室内移動が困難になっている。
  • 布団での生活。
  • 居住空間が2階である。
家族・本人の要望 歩行による移動の継続
住宅改修の目的
  • 失調歩行を基本とした歩行移動の安定および入浴、排泄時の立ち上り等の安定を目的として、必要箇所に手すりを設置する。
  • 本人は2階で居住し、布団で生活していたので、階段・居室にも手すり設置。階段の登りは歩行、下りは座りながら降りていた。
住宅改修の場所と内容
  • 居室(廊下):横手すり、縦手すりを設置。
  • トイレ:出入り口・便器左側と正面に横・縦手すり設置。敷居撤去。
  • 浴室:出入り口外側・洗い場出入り口部分に手すり、浴室内に横・縦手すり
支援チームの構成 在宅介護支援センターOT、障害者ワーカー、保健衛生部OT、工務店
福祉用具
支援前 電動車いす(屋外のみ使用)
支援後 電動車いす(屋外のみ使用)
改修後の評価
改修後、屋内移動による転倒は非常に少なくなった状況であったが、全く危険性がなくなったわけではなく、今後継続フォローの必要性がある

2年後の改修

日常生活の状況(改修前の状況)
起 居 自立 排 泄 自立
移 動 屋内車いす
屋外電動車いす
入 浴 自立
移 乗 自立 介護サービスの
利用状況
改修前:ヘルパー、訪問看護指導、デイサービス
改修後:ヘルパー、訪問看護指導、訪問看護、デイサービス
住宅改修の概略
問題点
  • 歩行による屋内移動が限界になっている。(転倒頻度が増加している)
  • 車いす利用における居住空間(特にトイレ部分)の不適合。
  • 既存玄関利用の限界。(駐車場⇔玄関まで歩行していた)
  • 浴室内への跨ぎ越しが困難になっている。
  • 2階での居住が困難になっている。
家族・本人の要望 余り大掛かりな改修は行いたくない。必要最低限で良い。
住宅改修の目的 自宅内車いす生活を基本として、家屋外へのアプローチおよび車いすからトイレおよび介助歩行による浴室へのアプローチの安定を目的とする。
住宅改修の場所と内容
  • 玄関:既存玄関からの出入りを中止。
    居室(6畳)の外(駐車場)へ玄関を新設。
    スロープ作成し、玄関部分で電動車いす⇔自走車いすへの移乗を行うようにする。
    スロープは車いすの脱輪を防止するために外側を高くしている。移乗用に縦手すりを設置する。
  • 居室:畳はフローリングに変更し、車いす走行(特に電動)に支障が無いことと、掃除がしやすいようにする。
  • トイレ:既存トイレを撤去し、新たに洋式便器を設置。
    便器の方向を180度反対方向にする。
    高さも便器の下に下駄を付け、7センチ程度高く設定する。
    出入り口部分の既存壁を撤去し、車いすでの出入りをしやすくする。また既存の手すりは移設する。
    前回設置した縦手すりの一部を撤去し、玄関出入り口へ移設。
  • 浴室:洗い場にすのこを設置し、段差の踏み越えをなくすようにする。
    浴室折れ戸を撤去し、シャワーカーテンを設置する。
    トイレのドア撤去および浴室のドア撤去に伴い、トイレのプライバシーおよび浴室の保温を兼ねてカーテンを設置する。
支援チームの構成 在宅介護支援センターPT、在宅サービスセンターOT、障害者ワーカー、保健衛生部OT、担当保健婦、工務店
福祉用具
支援前 電動車いす
支援後 電動車いす、標準型車いす、介護用ベッド、シャワーチェア
改修後の評価
  • 生活空間を1階としたことで、生活全体の効率が良くなっている。
  • ベッドと車いすによって、屋内移動における転倒に危険も少なくなっている。
  • 車いすからの移乗もトイレ改修により自立して行える状態となった
残された課題
浴室については、ヘルパー入浴のため車いす仕様にせずに比較的簡単な改修となった。
しかし将来的には改修の必要性が表出することが十分予想される。
また自走用車いすによる室内移動についても、今後自走が困難になるため、継続的にフォローする必要性がある。

5年後の改修

日常生活の状況(改修前の状況)
起 居 ゆっくりだが何とか自立 排 泄 常時紙おむつ使用中。
排尿は日中はトイレを利用するが、夜間は尿瓶を使用。
排便はトイレを使用する。
基本的には介助を要するが、自力で行い、トイレ内で転倒していることが時折みられる。
移 動 通常は電動車いすを利用。
2~3メートル程度であれば、両側に手すりと腰を介助し、何とか歩行可能
入 浴 自宅浴室を利用。
出入り口まで車いすで移動し、その後は浴室まで2メートル程度介助歩行を行う。
浴槽にも介助で出入りしており、洗体も介助している。
移 乗 両側の手すりと介助を要す 介護サービスの
利用状況
改修前:ヘルパー、訪問看護指導、訪問看護、デイサービス
改修後:ヘルパー、訪問看護指導、訪問看護、デイサービス
住宅改修の概略
問題点 前回に玄関の改修を行った結果、居室内へ直接電動車いすでアプローチが可能な状況となり、自走車いすの操作が困難になったことを受け、電動車いすを室内外で利用することとなる。
そこで問題になったことは床の耐久性が電動車いす+本人の体重では合わない状態であった。
家族・本人の要望 特になし。
住宅改修の目的 自宅内において、電動車いすを使用するための床補強を目的とする→屋内外全て電動車いすでの生活となる。
住宅改修の場所と内容 既存台所(前回改修時より居間と共有空間)の床を、電動車いすでの走行に耐えられるように部分変更を行う。
支援チームの構成 在宅介護支援センターPT、在宅サービスセンターOT、保健衛生部OT、工務店
福祉用具
支援前 電動車いす、標準型車いす、介護用ベッド、シャワーチェア
支援後 電動車いす(2台)→新規ニッシンNeo-P2、介護用ベッド、シャワーチェア、採尿器
改修後の評価
  • 約2年に1回の割合で、改修工事を行っている。
  • それぞれの時期で身体機能の低下をサポートする状況にはなっている。
  • 現在はヘルパー等のマンパワーも必要ではあるが、車いす基本の生活パターンで生活自体は安定している。ただし、自力で各動作を行うことが困難になってきているため、転倒などの危険も多くなっている。
  • 電動車いすを新たに1台屋内用で追加したが、電動で小回りがいいといった点で今回適応した機種は非常に優れている。
    (屋内の面積から、適応機種はこのタイプに限定された)
残された課題
  • 行政の制度を利用する場合、予想した改修が実行しにくい状況にある。よって、しばらくは利用できるといったレベルで計画を抑える必要があった。
  • 介護保険制度開始後、障害者施策が少なくなり(特に住宅設備改善について)、今後大規模な改修は困難と考える。
    現在独居生活で、家族の介護力が期待できない状況であり、障害者施策・介護保険・自費の3種類でヘルパー派遣を行っている。
  • 週3回のデイサービスを組み入れ、1週間の生活を組み立てている。
  • 現在の生活は何とか安定しているが、今後の問題として予想されるのは、
    1. 疾病の進行に伴い、排泄・入浴形態が変更になる可能性がある
    2. 本人の強い意志で在宅生活が継続している
    3. 家族の介護が期待出来ない
    4. 経済的な負担をこれ以上増やすことは出来ない