住宅改修情報

主として動線の確保により自立してできる動作が増え、より積極的になったケース

基本情報
年 齢 70歳 同居家族構成 本人、妻、次男夫婦、孫2人の6人暮らし
性 別 男性 主介護者
夜間頻尿のため妻の介助負担が大きい
疾患名 脳出血、転倒による硬膜下血腫、血圧がやや不安定 家屋の所有形態 持ち家
障害部位 右片麻痺
麻痺側の耳の聞こえがよくない
家屋の建築形態 1戸建て、木造2階建
要介護度 要介護3
身体障害者手帳1種1級
周辺環境 中心市街地までは徒歩10分程度。
寒冷地、降雪地域、住宅地域
日常生活の状況(改修前の状況)
起 居 ほぼ自立
床からの立ち上がりはできない。
立位保持不可。
排 泄 排尿は尿器
排便はトイレの便座に移乗するが、かなりの介助を必要とする
移 動 車いす自走(左片手片足) 入 浴 全介助
週1回のデイサービスで入浴
移 乗 車いすからの移乗動作はすべて介助 介護サービスの
利用状況
改修前:デイサービス(週1回)
改修後:デイサービス(週2回)
実際の改修箇所
カメラ 図面のこのマークにマウスをのせると実際の写真が表示されます。
改修前の状況
改修前
改修後の状況
改修後
住宅改修の概略
問題点
  • 自分でできることは少しずつでもやっているが、家屋内の水回りを中心に出入口敷居の段差が多い。
    また、その出入口前のスペースが狭いため、室内に入るにも介助が必要。
  • 間取上の不便性は無いが、移動するたびに出入口の敷居の段差に引っかかる。この段差は在来工法によることもあるが、床仕上げにおいて、コンクリート埋込みタイプの床暖房を採用しているため、敷居のレベルを埋め込まなかったと思われる。
家族・本人の要望
  • 本人は、家族の介助があるから何も心配ない。ただ、トイレで一人で排泄したいと思っている。
  • 家族は、すべての動作が介助でどうにかできるが、あまりにも妻に対する依存が強く、妻の健康状態が心配である。
    できるだけ自分でできることを増やし、家族の介護負担を軽減できるように改善したいと思っている。
住宅改修の目的 家屋内の移動および、外への出入りをスムーズにできるよう、段差解消および手すり取り付け、開口部幅確保等の改修を行い、家族に対する介助負担の軽減と本人の自立意欲を高め、日常的に外に出やすい環境をつくる。
住宅改修の場所と内容
  • 居室:デイサービスや通院の際には、テラスサッシから息子作成の木製簡易スロープを取り付けて出入りしている。
    (地面から居間の床までの高さは400ミリ)この出入りがスムーズにできるよう、コンクリート製のスロープを設置。
  • 寝室:居室との出入口の敷居を床レベルまで埋め込む。廊下への出入りドアを引き戸に取り替え。
  • 廊下:有効幅は780ミリで車いすで直進するのは可能だが、トイレおよび洗面脱衣室に入るためには車いすをよほど上手に操作しなければ難しい。
    洗面所と向かい合った階段のはね出している段板の切り詰めにより、移動の妨げになっていた部分を改善。
  • トイレ:出入口が狭く、床が廊下より70ミリ高いため、車いすで入れない。
    床暖房設備のため、段差を下げることはできないが、出入口前に滑リにくい素材で仕上げたスロープを設置し、出入り扉の有効幅を900ミリ確保し、つかまりやすくするために建具枠の出寸法を大きくする。
    便器は洋式(簡易水洗)で、手すりは付いているが有効に使用できていない。
    既存ステンレス製手すりを木製に取り替え、便器背面に横手すりを取り付ける。
  • 洗面・脱衣室:出入口が狭く、敷居の段差がある。引き戸を2枚引き込み戸に取り替え、敷居も床レベルに埋め込む。
    洗面器の位置が入り口のすぐ脇である上、車いすで正面から使用できないため、車いすを横付けにし、身体をねじって歯磨きを行っている。
    洗面所内の機器レイアウトを変更し、出入口からまっすぐ洗面台が使用できるよう、車いす仕様の洗面台を設置。
  • 浴室:脱衣室との間に100ミリの仕切りがあるが、簡易スロープを使用する。
    浴槽脇および洗い場に横手すりを取り付ける。
支援チームの構成 ケアマネジャー、建築士、施工業者、福祉用具事業者
福祉用具
支援前 車いす(ロホクッション)
支援後 バスチェアー、シャワーベンチ、コンパクトスロープ
改修後の評価
  • 自宅内での車いす移動、トイレでの立ち上がり、洗面所での洗顔や、歯磨きなど、残存能力を生かしながら、自分でできることが増え、顔つきが変わった。
  • 現在デイサービスを週1回利用しているが、自分から2回に増やしたいと申し出られて、リハビリと車いす操作の訓練を強化する予定。
  • ベッドからの起き上がりはまだ少し時間がかかり、車いすへの移乗に手を貸すくらいで、家の中での移動は一人でできるようになった。
  • トイレの介助も毎回行っていたが、排尿は一人でもできるようになったことで、家族の心配が少し減りよかった。
  • 車いす使用の洗面台は孫たちにも喜ばれていて、毎日の朝シャンが座ってできて楽とのこと。
残された課題
今後介助が必要になると思われる部分としては、ベッドから車いすへの移乗と車いすから便器への移乗であり、身体機能の低下に伴い、積極的に福祉用具の導入を考えなければならない。