住宅改修情報

段差が多く、動線も確保できない古い家を改修して、独居を可能とした例

基本情報
年 齢 73歳 同居家族構成 一人暮らし(同町に弟夫婦が居住)
性 別 女性 主介護者
疾患名 転倒による骨折(右上腕骨近位端骨)、入院中の転倒による骨折(右大腿骨転子部)、糖尿病、高血圧 家屋の所有形態 持ち家
障害部位 加齢による筋力低下 家屋の建築形態 一戸建て、木造平屋建、築90年以上
要介護度 要介護4(痴呆症状あり) 周辺環境 中心市街地までは徒歩10分程度
日常生活の状況(改修前の状況)
起 居 ほぼ自立
床からの立ち上がりはできない
排 泄 自立
立ち上がりが不便であること、起きられないため、夜間はオムツ使用
移 動 自立歩行だが、ふらつきあり
杖使用
入 浴 一部介助
移 乗 何かにつかまりながら自立 介護サービスの
利用状況
改修前:なし
改修後:配食サービス(毎日3食分)、ホームヘルプサービス(毎日4回)(主に食事、入浴介助)、デイサービス(週2回)、訪問看護(週2回)
実際の改修箇所
カメラ 図面のこのマークにマウスをのせると実際の写真が表示されます。
改修前の状況
改修前
改修後の状況
改修後
住宅改修の概略
問題点
  • 築90年以上も経つ住宅であるため玄関から続く土間縁、流し場と、寝室や居間のある畳と畳の間には約600ミリの段差があり、日常の生活を行うための動線がすべてこの段差を上がり降りしての移動となる。
  • 浴室およびトイレはいったん外へ出る必要があり、冬期の排泄、入浴は非常に困難である。
    そのため、健康な時から本人が進んで夜間にオムツを使用していたよう。
  • 本人は母親の死去に伴い一人暮らしとなったが、家事および日常生活においての介助や見守りなしでは一人暮らしは困難。
家族・本人の要望
  • 本人は5年前に骨折してから病院や施設で過ごしてきたが、家に帰りたいという思いが強い。
  • 治療、リハビリを続けながら病院と福祉施設を行ったり来たりしており、これまで自宅へは一度も帰宅していなかった。
    本人のことを考えると、自宅に帰したいが、家が古すぎて改修できるのか不安。
住宅改修の目的 退院後はリハビリ病院を経て、老人保健施設に入所している。
ゆっくりではあるが、歩行は可能(時々杖も使用)。
しかし、体調によっては、車いすの使用も視野に入れる必要があるので、段差解消が必要であり、自立歩行の場合は、何かにつかまらないとバランスを崩すため、手すりの取付も必要である。
日常生活の基本的な動作を行う機能を確保し、住み慣れた地域で一人で暮しつづけられるように、出入口および廊下、居室、台所、浴室、トイレの改修を行う。
住宅改修の場所と内容
  • 寝室・居室:5年間家を空けていたため、畳の傷みが激しく、また将来予想される身体機能の低下に伴い、ベッドおよび車いすの使用も考慮する必要があるため、床をフローリング張り(床暖房設備)にする。台所も同様。
  • トイレ:外便所で、和式便器のため、居間に隣接して新設。洋式便器(簡易水洗)、暖房便座、洗面台(車いす仕様)を設ける。L型手すり取り付け。
  • 浴室:外風呂で、和式浴槽であり、本人が跨ぐには高すぎる。
    トイレとのワンルームとし、洗い場および車いすの回転スペースを確保。
    床段差をなくし、3枚引きアルミ製引き戸にする。
    シャワーヘッドハンガー兼縦手すりを設置。
  • 廊下:土間縁を玄関出入口敷居先端と居間をつなぐスロープとする。
    木製手すりを設置。
  • 玄関:玄関敷居は既存のままで(前面道路から120ミリの敷居)、出入口引違い戸を2枚引き込み戸に取り替え。
    レールは埋め込みレールに取り替え。
  • 玄関から道路:前面道路から玄関出入口までのコンクリートスロープかさ上げ。
  • 動線:家の間取りが部屋から部屋を通って移動する間取りである。
    台所および浴室、トイレを居間に隣接させる。
    自立して室内から屋外への移動ができるよう段差を解消。
支援チームの構成 看護婦、ケアマネジャー、建築士、施工業者、OT、行政担当者
福祉用具
支援前 なし
支援後 購入(介護保険):浴室用シート、シャワーシート、車いす
レンタル:電動ベット(3モーター)、車いす(自走タイプ)
改修後の評価
  • 本人:畳みがないのは残念だけど家に帰ってこられて良かった。
    (普段気に入って座っているのは車いすであったが、移動は杖がなくても歩くことができていた。)
  • 家族:かなり古い家であるが、子供の頃の思いでを残すかたちで、生活しやすい空間を作れてよかった。
    なにより、姉のホッとした顔を見ることが出来、本人が喜んでいることを感じた。
残された課題
特になし