公益財団法人テクノエイド協会 - Association for Technical Aids

退院のために不十分ながらも改修し、訓練をかねて少しずつ改善を図っている

基本情報
年　齢	66歳	同居家族構成	夫
性　別	女性	主介護者
疾患名	農作業中の事故による下腿骨骨折	家屋の所有形態	持ち家
障害部位	右足関節機能全廃、右足補装具	家屋の建築形態	１戸建て木造2階建て
要介護度	要介護2 身体障害者手帳2種5級	周辺環境	山村地域

日常生活の状況(改修前の状況)
起　居	ほぼ自立	排　泄	自立
移　動	松葉杖歩行 室内では、手すりがあれば杖を使用しなくても歩行可能。	入　浴	病院内では一部介助 しかし、自宅の浴室は広く、自力で入浴することは困難。
移　乗	自立	介護サービスの 利用状況	改修前：なし 改修後：送迎サービス(希望時に申請)

実際の改修箇所
図面のこのマークにマウスをのせると実際の写真が表示されます。
改修前の状況
改修後の状況

住宅改修の概略
問題点	事故後約１年間の入院生活を送ってきた。 現地調査の前に外泊をしてみたが、慣れないこともあり、松葉杖を使用しての生活ができるか本人自身も不安がある。 家屋内の段差の多さおよび、スペースの狭さが本人の移動と自立の障害になっている。 ただ、それぞれの日常生活動作は自立しているので、できるだけ移動をスムーズにできるような工夫が必要である。
家族・本人の要望	とにかく早く退院し自宅で生活したい。 松葉杖により歩行は可能だが、手すりがあれば杖はなくても歩行できると先生が話ししている。 家族が日中仕事に出かけている間は一人きりのため、トイレや食事の仕度を自立できるようにさせたい。
住宅改修の目的	150ミリ前後の段は杖や手すりを使用しながら上り下りできるが、階段の上り下りは無理。 また、長時間は立っていられず、自立歩行はつかまらないとバランスを崩すため、日常最も多く使用される場所への手すりの取り付けが目的。 家屋内の段差解消等が外への出入りにつながることで、積極的に社会参加ができるよう屋内外の段差解消と手すり取り付けが目的。
住宅改修の場所と内容	台所：本人は身長が低いため、流し前に立った際に､瞬間湯沸し器に手が届くのかどうかと、ガスコンロを使用する際、松葉杖をついたまま鍋の中を覗いたりかき混ぜたりできるのかは不明。 勝手口､廊下出入口に縦手すり取り付け。 トイレ：廊下突き当たりに片開ドアがあるが、ドアチェックが不良のため、本人の状態では開けることが困難である。 また、小便器と大便器(和式)の間仕切り扉も片開扉で、松葉杖で移動しながら便器にたどり着くのは難しい。 出入口扉取替え。 小便器と大便器との間仕切り及び建具撤去の上、敷居撤去後床仕上げ。 据え置き式洋式便器(既存)設置。 便器左壁手すり取り付け。 廊下：台所､居間､寝室､洗面・脱衣室、トイレの床から400～500ミリの段差あり。 また有効幅が790ミリと狭い。 床下地および仕上げ。 縦、横手すり取り付け。 勝手口：有効幅790ミリ。 台所から屋外まで220～180～150ミリの段差あり。 横、縦手すり取り付け。 踏み台設置。
支援チームの構成	介護福祉士、PT、建築士、施工業者

福祉用具
支援前	なし
支援後	なし

改修後の評価
本人：家に帰ってくることが出来て良かった。 松葉杖に少しづつ慣れてきたが、自由に歩くことは難しい。 また、天気の良い日に外を歩く練習をしているが、足元が悪くいつ転ぶか分からないため不安がつきまとう。 家事は1年ほど離れていたので､なかなか元に戻れないが少しづつやりたい。 移動とトイレはとてもスムーズだが、松葉杖をつきながら手に物を持って歩くのは工夫が必要。 家族：食事の仕度はまだ夫がしているが、２人でいられることがなにより安心。 少しずつ家での仕事に慣れてもらえればと思っている。 買い物は夫が仕事帰りに買い揃えて来るが、休日には２人で買い物に行く。 生活にも張り合いが出てきた。 支援者：改修後家での生活状況について聞いたところ、自宅で生活出来ることの喜びが伝わってきたので､改修工事を提案してよかったと思っている。 今後は家で出来る仕事を一つづつ増やして､自信を持てるように支援したい。

残された課題
今回の改修工事では、経済的な理由で浴室の改修および玄関の改修は見送ったが、改修後の生活状況を聞いた所、浴室は既存のままに中古の椅子を知り合いから譲り受け、夫の介助で一緒に入浴していると話している。 現場調査の時点で担当のPTから、現在の足首の状態から自宅での入浴は不可能との意見を頂いたが、実際は狭いなりにどうにか使用している。 このことから、今後の介護状況の変化に伴う改修工事が必要になった時、できるだけ現在の使用状況を確認した上で浴室の改修を考えたい。 また、道路に出るためには玄関の段差解消および手すり取り付け、屋外階段の踏み面の改修が必要になると思われる。